アダルトゲームメーカーおよび、ブランドは、2006年7月現在、541のブランドがコンピュータソフトウェア倫理機構(ソフ倫)に加盟している。近年はコンテンツ・ソフト協同組合メディア倫理委員会(メディ倫)での審査を行っているブランドも少なくなく、こちらの加盟ブランドも考慮すれば、およそ600から700ものブランドが現存していると推定される(※ただし、この数字についてはブランド数であり企業数ではない。またAlice Blueの様に会社組織としては存続しているが、現在は活動を休止している派生ブランドなども含まれている)。
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ゲームソフト卸や一部のゲーム会社が自社の傘下に入る事を条件に資金援助するシステムが広く確立されており、新規参入に際しては比較的容易である。このため毎年数十のブランドが新たに登場するが、その一方で、それに近い数のブランドが消滅してゆく。この業界では1作出したのみで消えてゆくブランドは珍しいものではなく、中には発売予告まで行っていたものの実際の発売にこぎつけられずにフェードアウトしてしまうブランドも見られる。
企業形態・労働・内部事情
アダルトゲームの制作会社は、規模の大小こそあれ、家庭用ゲームの制作会社と比較すればおおむね小規模である。自社ビルを所有する会社はほんの数社程度であり、法人格を持たず普通のマンション(代表者の自宅の一室など)を仕事場にするケースも珍しくない。労働条件については家庭用ゲーム同様に、ごく一部の例外を除きほぼ一様に劣悪で、福利厚生面も脆弱であると言われている。
コンシューマ機のゲームと比較すればほとんどが売上規模が小さい事から、ゲームだけでは経営を維持する事は中々に難しく、資金繰りの為に別のビジネスを行っているブランドも多い。中小企業向けの業務用アプリケーションやウェブデザイン、携帯電話向けソフトの下請け製作など、ゲーム開発の技術を応用できるサイドビジネスを行っているメーカーは、業界中堅とされるそれなりの程度の知名度を持つブランドでも珍しいものではない。この事もありコンシューマーゲームと違って法人や開発チーム名とは異なるブランド名を用意して、こちらを前面に出している所が多い。そのため、消費者が母体となる企業の法人名を知らないことも多く、プロデュースなどと謳われていても実態としては販売代行のみ行っている事が明らかで、実際の製作会社は非公開になっているケースもある。場合によっては、アダルトゲームの発売に本来の企業名が出ると差し障りが出ると考えるコンシューマ機用ソフトの開発チームや、資金力と実績に乏しい小規模な開発チームがソフ倫審査を通過させて販売する為に、いわばOEM製造に近い形式でアダルトゲームを制作し、表に出る側のブランドが委託を受けて審査・販売・広告宣伝などを担当する事もある。その為、企業内の開発能力に対して過剰な営業部門を持っている様に見える、事情を知らないと不自然に見えるブランドも存在する。
また、近年の大容量メディア技術の進歩が招いた大作化の傾向により自社で全ての制作作業をまかなうのが難しいため、製作の一部について外部に委託することも珍しくない。特に宣伝などにも用いられるムービーは専門的な技術が要求されるため、自社制作を行えるメーカーはほとんど無く、業界大手でもムービーと声の収録はほぼ全て外注である。そして、このゲームの大作化は製作期間の長期化、製作に関わる人物・企業の増加、ひいては人件費の増大に繋がる事が多く、今では制作コスト上昇の最大の要因となっている。このコストの上昇については、当然ながら最終的には小売価格に跳ね返って来る事になる。
さらには、ここ数年の間にムービー、主題歌、台詞の音声付加、初回特典などがごく標準的な要素となり、これらが売り上げ本数に大きな影響を及ぼす様になった為、ゲームに付随する部分での製作費用も雪だるま式に増大化する傾向が見られている。それゆえにアダルトゲームの売上規模では、販売本数的に成功と言われるものであっても製作費をそのゲームソフト単体では回収しきれないものすら出てきている。この為、利益確保の為に性的要素を排除した『全年齢版』を制作し、これのコンシューマ機への移植の他、キャラクターグッズやトレーディングカード、フィギュアなど版権利用のサイドビジネスを積極的に展開したり、ファンディスクなどの関連商品を販売するブランドも中堅以上では珍しくはない。他方、特に台詞への音声の付加に掛かる人件費や主題歌の製作などのコストはアダルトゲーム業界全体のコスト上昇の要因となっているが、一方で現在のアダルトゲームの販売価格を考えた場合、これ以上の価格転嫁は事実上不可能に近い。かと言って、逆にこれら要素をコストダウンの為に除外する事も、低価格路線のゲームですら音声入りのものが当たり前の様に出ている近況を鑑みた場合、極めて困難と言わざるを得ない。その為、最近では5年以上の活動実績を持つブランドですら、この際限の無い制作費の増大に経営面で耐えきれなくなり、ゲームソフトの新規開発を断念するところも現れる様になっている。
音声という要素が当たり前に付く様になって以降の大ヒット作であっても、『AIR』『Fate』など音声がつけられていないものも存在する様に、音声がヒットの為に必須であるとは一概には言いきれない。ただし、音声がつかないものは異端扱いされる傾向にあり、ヒットした音声無し作品では、新たに収録した音声を付加したものが新バージョンとしてあらためて発売される事も珍しくない。
開発チームが小規模であるためゲーム制作の工程管理が難しいことから、ゲームの発売が延期されたり、発売されたゲームにバグが存在するケースも枚挙に暇がない。近年はインターネットの普及により修正差分の配布が容易になったことなどもあり、製品品質の維持が疎かになる傾向が見られ、バグの増加も顕著になっており、いまやバグも発売延期も無いゲーム自体が稀になってしまった。バグの内容は様々であるが、ゲームの進行において動作不能になるなど致命的な問題を引き起こすのみではなく、中にはインストールの際に誤ってハードディスクの全内容を消去してしまうという深刻なバグを残したまま発売され、不具合が製品回収騒ぎに発展した作品もある。また、発売延期という点では、当初予定していたよりも構想が膨らみ過ぎ、シナリオや画像の追加を延々と繰り返すなどした挙げ句、年単位での発売遅延が発生するなど、工程管理が完全に破綻しているケースも見られる。
また、開発チームの多くが小規模であるが故に、会社や人材の離合集散が激しいのも特徴である。会社内部での問題から開発チームが独立したり解散する場合も多く、この際、人気があるスタッフには以下の様な進路を選ぶ者が多い。
ヘッドハンティングによる他社への転籍
自主的移籍
フリーランス(外注)のクリエイターへの転身
開発チーム間の人材の流動は比較的活発で、特にキャラクター原画・シナリオのスタッフについてはフリーランスのクリエイターとして業界を渡り歩く者も多い。その中でも特に人気の高い原画担当者については、その関与がゲームソフトやゲーム関連雑誌、さらにはメディアミックス情報誌、ライトノベル(挿絵を担当)などの売上向上に大きく寄与するため、フリーランスになった途端に引っ張りだこになることも珍しくない。この事もあり、人気クリエイターの独立においては、一見した限りでは自主的な独立であるが、実態としては他社やマルチメディア系出版社が黒幕として糸を引いていたと噂されるケースも少なくない。
その一方で、ライトノベルの挿絵などについて社内スタッフの副業を認め、奨励しているメーカーも多い。
スタッフの知名度アップと、それによる自社製品の販売力向上
スタッフの収入確保と社外への流出防止
開発スケジュールの手の空いた時期の仕事の確保
マルチメディア系出版社とのコネクションの醸成(さらには自社作品のメディアミックス展開)への期待
会社側がスタッフの副業を認める要因は主にこれらであるが、逆にこの副業で人気を博した者がフリーランスのイラストレーターやシナリオライターとして独立してしまうケースも見られる。また、原画担当者がメーカーの経営者や幹部である場合などには、自らの直接の収入ではなくメーカー経営の一助として行っている場合も見られる。
なお、原画であっても特に背景画については、アニメ背景を主業とする下請けプロダクションがアニメ業界における同業者の乱立などを背景にアダルトゲーム業界にも進出してきている事と、人物を魅力的に描ける原画担当者であっても背景画の技術が伴っていない事が少なくない事から、近年では外注での制作が当たり前になってきている。また、I'veやfeelなどアダルトゲームの音楽を手掛ける製作集団が台頭し、彼らの音楽(特に主題歌)もゲームにとっては販売促進の効果を持つ話題となる事から、近年は主題歌やBGMについても内製率が低くなっており、最近では音楽専門のスタッフが在籍しているメーカーは中堅以下では少なくなっている。
他方、この業界はクリエイターへの依存度が極めて高いという事も特徴としてあげられる。インターネット上を中心とする購買層からの評価や要求が厳しいほどに売り上げに直結する業界であり、ここで評価の直接の対象とされる事も多いキャラクター原画やシナリオなどの特定のクリエイター個人の人気度と、ブランドの人気度が全く同義となっている開発チームは別段珍しいものではない。その為、これらスタッフの人気の沸騰により販売力が短期間で著しく向上してゆくブランドも多い一方、社員としてブランド人気を一手に支えてきたスタッフの、独立や移籍目的、逆に人間関係のもつれなどでの退職が、ブランドや開発チーム、場合によっては企業自体の存続問題にまで直結してしまうケースも見られ、解散に至ったケースもある。また、噂の域を出ないものが多いとはいえ、前作の成功で一躍人気となったクリエイターが増長してしまい、パワーハラスメントなどの問題が起きたとされる話も、この業界では過去幾度となく聞かれている。この場合、同僚もそのわがままを抑えられない状態となり、次回作の製作に際して他のスタッフの仕事にも干渉し、結果として作品全体に悪影響を及ぼしたり、グラフィック・シナリオなどの完成度にこだわり過ぎて製作期間の大幅な超過を引き起こすなど、小規模集団内の特定人物の人気ゆえの問題に悩まされ、これにより終了に追い込まれた人気作品のシリーズもあると言われている。
しかし、その一方でこの業界のクリエイターについては「消耗品」「使い捨て」と揶揄される事さえあるほどに、消長盛衰が大変激しいという一面も持ち合わせている。この消長盛衰の激しさを生む背景としては、以下の様な要因が挙げられる。
創作活動による精神的な消耗
メインスタッフとして関わった作品の商業的失敗・インターネット上での低評価や酷評
新たな才能や表現技法が次々と登場してくる事による淘汰
クリエイター自身が人気の維持・向上の為に作風を変化させようとして、かえって人気であった要素を自ら崩してしまう
その他、結婚・出産などの生活の変化や加齢による心境の変化と共に性描写を描きにくくなり、この業界から離れてゆく者も特に原画担当者を中心に少なからず見られる。他方、コンシューマ機のゲームよりも売上規模が小さいものがほとんどであるだけに、特にフリーランスの立場にあって人気を得たクリエイターの場合、人気を博した事で起用に高いギャランティーが必要になるというイメージをメーカー側に抱かれてしまい、人気・実力は認められながらも予算面の都合から起用を避けられる様になり、かえって仕事を失い、アダルトゲーム業界から離れていったと言われている者も存在する。
いずれにせよ、アダルトゲーム業界のクリエイターについては、原画担当の場合には漫画家やイラストレーター、アニメーターに、シナリオライターの場合はライトノベルやジュブナイルポルノの作家、雑誌や書籍のライターに転業したり、転業を試みた、また完全に転業しなくともこれら分野で仕事をするケースは多数見られ、特に商業出版でもライトノベルやメディアミックス情報誌など青年層以下を対象とした分野の出版物では、現在ではアダルトゲームの業界を経験した人物は珍しいものではなくなっている。これらの中には、ライトノベル関係の仕事などを足掛かりにして、アダルトジャンルではない分野へと活動の軸足を移してゆく者も少なくないが、それでも結局はかなりの割合でいわゆる萌え産業の範囲内にその身を置く事になる(転業後萌え産業の範疇から脱出した非常に稀有な例として、山田桜丸(現:桜庭一樹)が存在する)。
その一方、商業出版での創作活動について回る様々な制約や規制を嫌った者や、あるいは逆にゲーム産業より日程管理の厳しい商業出版の世界への適応ができなかった者、元々から同人の世界で大々的に活動し知名度を持っている者の一部には、俗に『プロ同人』と呼ばれる、コミックマーケットなどの同人イベントや、同人ショップでの委託販売などに活路を求めるケースも見られている。